天正四年、一五七六年。
海外でMBAを取得し、過労死した企業再生コンサルタントの男は、病床の明智光秀として目を覚ました。
本能寺の変まで、あと六年。
未来を知る光秀が見抜いたのは、信長の苛烈な性格だけではない。
織田家は、信長一人の判断と威光に依存している。後継者育成、権限委譲、家臣間の情報共有、評価と恩賞。そのすべてに、組織を崩壊させかねない歪みがあった。
このままでは、自分が謀反を起こさなくても、別の誰かが織田家を壊す。
そこで光秀は、未来知識とMBAの組織論を武器に、織田家の「事業承継」に乗り出す。
後継者・織田信忠の育成。
古参家臣と新参家臣の役割再設計。
外様大名を離反させない統合制度。
婚姻同盟のルール化。
会議と情報共有の改革。
そして、信長本人から次世代への権限委譲。
目指すのは、信長がいなくても動き続ける織田家である。
だが、制度を変えれば既得権を失う者が生まれる。荒木村重、羽柴秀吉、黒田官兵衛、長宗我部元親。歴史上の英雄たちは、光秀の改革によって新たな選択を迫られていく。
しかも、歴史を一つ変えるたび、光秀が知っている未来は役に立たなくなる。
救えた命もあれば、止められなかった離反もある。天下布武の裏側に積み上がった組織の歪みは、やがて本能寺へと収束していく。
これは、明智光秀が謀反を起こさないだけの物語ではない。
謀反という選択肢そのものが不要になる組織を作る、戦国事業承継物語である。