柊木十和子は、かつて「柊ワコ」の名で国民的人気を誇った天才子役だった。
年齢離れした抜群の演技力と、天使のような愛らしいルックスで愛された彼女は、成長とともにイメージが崩れ、仕事は減り、ついには事務所を契約解除。
目を引く黒髪美人に成長した今の彼女を、世間はもう見てくれない。
そんな十和子の前に現れたのは、幼稚園から彼女を知る幼馴染・藍沢イツキ。
彼は十和子の最古参ファンであり、誰よりも「柊ワコ」を信じ続けている少年だった。
「柊ワコは終わってないし、十和子はまだ始まってもいない」
イツキが提案したのは、かつての柊ワコを、昔の姿のままVTuberとしてもう一度始めること。
画面の中で、柊ワコはもう一度笑う。
コメント欄は沸き、過去のファンも、新しい視聴者も集まってくる。
けれど、再び注目されるのは“柊ワコ”。
今の柊木十和子ではない。
そして十和子には、ずっと恐れていることがあった。
――イツキが好きなのも、『柊木十和子』ではなく、『柊ワコ』なのかもしれない。
幼馴染との初恋は、昔の姿で止まってる。
過去の自分に勝てない元国民的子役と、彼女に人生を救われた最古参のファン。
近すぎる二人が過去を挟んですれ違う、こじらせ初恋ラブコメ。