【三回死んだ相続人の謎を、一通の書類が暴き出す】
行政書士・角田(すみた)は書類を読む。端から端まで。赤ペンで印をつける。事実を並べる。それだけ。
東京・本所の小さな事務所。ある日、一人の女性が訪れる。
「兄は三回死んでいるんです」
三枚の戸籍謄本に記録された、三度の死亡。角田は現場には行かない。書類の矛盾から真相に辿り着く。
蕎麦屋のかけ380円を毎日食べ、手帳に赤ペンでメモを取り、出されたものは全部食べる。
そんな男の事務所に、警視庁捜査一課の黒田警部が缶コーヒー片手に転がり込んでくる。
死亡届の裏に隠された土地。建設業許可の数字が合わない会社。温泉権をめぐる三十年の空白。大阪の串カツ屋で止まった箸——
角田は判断しない。事実を見せる。判断するのは依頼人。
書類は嘘をつかない。嘘をつかせるのは人間だ。
世界一地味な、本格事務系サスペンス。
※本作品はカクヨムにも掲載しています。
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