「アリシア・シャーロット・アシュフォード。貴様との婚約を破棄する」
春の祝賀会で、わたくしは王太子殿下から婚約破棄を告げられました。
けれど正直に申し上げますと、殿下のお言葉は、まともに聞いておりませんでした。
だって殿下の後ろに、長い髪で顔を隠した白いワンピースドレスを着た女の方が立っていらっしゃったのですもの。
わたくし、魔法はひとつも使えません。そのかわり、『それ』が視えます。そして、前世は霊能力者でございました。
そんな、わたくしの追放先は、送られれば死罪に等しいと誰もが恐れる、呪いの『人形の館』。
それを聞いて、わたくしが思わず口にしたのは――。
「ようやく、本物の悪霊を拝見できますわね」
「お嬢様、お支度を始めます」
同じく視える専属メイドのマリアは、いつもと変わらぬ手つきで、旅行鞄をご用意しています。なんと、マリアも一緒に来てくれるそうです。
そして、館では呪いのお人形さんと暮らすことに!
前世で聞いた怪談そっくりの悪霊の皆様に、わたくし、今日も嬉々として会いに参ります。
うふふ。時代は悪霊かもしれませんわ!
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