柏木直輝、26歳。
彼には、守るべき家族も、大志もなかった。
あるのは、手取り15万の給与明細と、いつ尽きるか分からない20万円の貯金。大学の学費を稼ぐため、介護職員として働き、慎ましく生きる「底辺の生活」が、彼の全てだった。
しかし、その日常は、ある日突然、リサイクルショップで買った32型の液晶テレビによって崩壊する。
テレビの画面が、異世界の木のウロに繋がったのだ。
広がるのは、危険な魔物が徘徊する森。
彼はその森に、自由に、何度でも、行き来できる。
ナオキには、特殊能力も、強大な魔力もいらない。
彼が手にしたのは、日本と異世界を繋ぐ、その32型テレビだった。
ただし、制約は極端に厳しい。
画面(約70cm×40cm)より大きなものは通らない。そして、ポータルに何かが挟まったまま10秒が経過すると、ナオキの体だろうと、空間ごと容赦なく切断される。
これは、一人の介護職員が、その現実的な知識と、アパートの物資を武器に、異世界と交易していく物語。
「俺は、魔法もスキルもねえけど……」
彼は、スーパーで買った100円の塩と、3000円の解体用バールを握りしめた。
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