「わるいが、君を塔に残すのは難しい…」
君程度の才能、いくらでも代わりはいるんだよ…という心の声が聞こえた。
中央の研究塔に落ち、地方の塔でも芽が出なかった。
かつての好景気なら、学歴だけで食いっぱぐれなかった。けれど今は、敗戦の傷跡が残る「椅子」のない時代。
結局、僕が実家のコネで滑り込んだのは、大国の王弟が雇う外国人傭兵団の――「兵站実務」という名の、現場のゴミためみたいな職場だった。
主人公、レオン・カルディアス。
取り柄は、帳簿の整理、冷徹な観察、正確な計算。そして、松明にすら届かないほど微弱な魔法。
剣も振れず、臆病な彼は、どう見ても戦場には不似合いだった。
けれど、軍が飢えずに進めるかは、英雄の武功ではなく、彼の手元の帳面にかかっていた。
水の異常を感知し、食糧の腐敗を抑え、荷駄の崩れを予測し、特権階級の勝手な配給要求を数字で殴って黙らせる。
派手な奇跡は起こせない。けれど、学んだ知識は、泥を啜るような現場でこそ、確かに人の命を繋いでいく。
しかし、遠征は王弟の野心とともに、未曾有の破滅へと加速していく。
裏切り、補給難、内紛、そして冬の山越え。
「勝てるか」ではない。「明日、何人死なずに済むか」だけを考えなければならない地獄の撤退戦。
これは、学者のなりそこないが現実という名の戦場に放り込まれ、
ぼろぼろの負け戦を、なんとか「手痛い負け戦」程度にするために足掻く、生存と実務の記録。
――あの冬の時代、椅子を奪い合ったすべての人々に
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