「もし劉備に、最初から軍師がいたなら――三国志の歴史はどう変わったのか」
後漢末から三国時代を専門とする古代史研究家・高瀬修平、四十一歳。
劉備には、人を惹きつける力があった。
関羽と張飛という、天下に名を残す武将もいた。
それでも彼は長く確かな地盤を持てず、敗れては流浪を繰り返した。
修平は研究者として、ずっと一つの疑問を抱いていた。
劉備に足りなかったのは、人材ではない。
彼らを「軍」にし、得た土地と人材を「勢力」として残し、勝利を次の勝利へつなげる者が、あまりにも遅くまで現れなかったのではないか。
そんな修平が目を覚ましたのは、西暦一八四年。
黄巾の乱が始まろうとしている涿郡だった。
しかも自分は、史書には名を残していない青年――劉備玄徳の実の弟、劉恪になっていた。
本来なら若くして死に、歴史から消えるはずだった男。
やがて劉恪は兄・劉備とともに、関羽、張飛と出会う。
そして桃園で交わされる誓い。
本来なら三人だったはずの義兄弟は、四人になった。
劉備が人を集める。
関羽が敵陣を断つ。
張飛が戦場を打ち破る。
ならば自分は、三人が勝つための道を作る。
敵将の性格を読み、兵を動かし、伏兵を置き、調略を仕掛ける。
戦場で勝つだけでは終わらない。
兵糧を確保し、人を残し、土地を守り、得たものを次の力へ変えていく。
知っている歴史は、未来を保証する攻略本ではない。
それでも、この時代がどこへ向かうのかは知っている。
ならば――兄を、もう流浪させない。
諸葛亮が劉備のもとを訪れるより、はるか以前。
桃園から始まる、もう一つの三国志。
三人で始まったはずの英雄譚を、四人で塗り替える。
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