俺はゾンビだ。
世界が終わった日、最初に感染し、それでも理性を失わなかった。
噛まれ、村を追われ、群れの一部となった俺は、それでも"考える"ことをやめなかった。
理性を保ったまま、本能に喰われていく自分を、ただ見ているしかなかった。
人類は次第に崩れていった。
報道は遅れ、政府は機能を失い、文明は内側から腐っていく。
それでも生き延びようとする者たちがいた。
刀一本で群れに立ち向かう剣士。
すべてを記録し続けようとする、ひとりの観測者。
そして、群れの中にも変化が訪れる。
人を喰らった者たちの一部が、異能に目覚めていく。
理性を統べる金色の王。
破壊を体現する紅の鬼神。
ふたつの意志が、滅びゆく世界の頂点に立ち、新たな秩序を築いていく。
記録者だった彼女もまた、やがて人間であることをやめた。
国は沈み、文明は陥落し、群れはもはや人類と対等な——いや、それ以上の存在となった。
人間でもなく、化け物でもない俺は、その渦中に立ち続け、すべての終焉を見届けることになる。
――勝利の果てにあったのは、虚無だった。
すべてを手にしてなお、消えない問いがある。
俺は、まだ人間か。
全100話完結済み
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