50億2025年。太陽が死んだ世界で、人類はまだ生きている。
百年前、超国家的組織《ネビュラス・ドットインク》が太陽を作り直したおかげだ。そのエネルギー源は、魔王、勇者、魔女、魔法少女――人知を超えた力を持つ少女たち【変位個体(ディスプレイスド)】。彼女たちからエネルギーを抽出し続けることで、世界はどうにか回っている。
灰嶋司、20歳。他に就職先がなかったので、この組織に入った。
配属先は地下117階。担当は変位個体五名の管理業務。
支給品は型落ちの防護スーツと、表紙しかないマニュアル。前任者の欠勤届の理由欄には「死亡」と書かれていた。
近づくだけで記憶が消える魔王。嬉しいと空間が裂ける勇者。喋ると声が凍る魔女。笑うだけで建物が壊れる獣。未来が見えるのか見えないのか分からない魔法少女。
一見すると可愛い女の子にしか見えない彼女たちだが、一歩誤れば死ぬ。二歩誤れば区画が消える。三歩誤れば日本が消える。
武器はない。「対話で解決してください」が組織の公式方針。
危険手当の申請書は148ページ。退職届の提出には臨界点を3回生き延びた実績が必要。
人類最後のブラック企業で、今日も命懸けの管理業務が始まる。
――福利厚生充実、配給物資完備。ここでは、何でも支給されます。命以外は。
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