七歳の少年ヒロには、これといった夢がなかった。
親友のガレスと剣を振り、畑を耕し、木を切り、鍛冶場で鉄を叩く。
小さな陽だまり村で、村人たちに囲まれて暮らす毎日。それがずっと続けばいいと思っていた。
しかし十歳の誕生日を迎える頃、村はたった数日のうちに滅びた。
残されたのは、ヒロとガレスの二人だけ。
ヒロが持ち出したのは、亡き鍛冶職人から受け継いだ、一つの赤い工具箱だった。
二人は故郷を離れ、王都へ向かう。
最強の冒険者を目指すガレスとは対照的に、ヒロは冒険にも名声にも興味を示さない。
どぶをさらい、庭木を切り、壊れた道具を直す。
やがて地下の魔力導管を修繕し、職人たちから技術を学び、少しずつ王都の人々と繋がっていく。
自分には、特別な才能なんてない。
そう思っているヒロは、まだ知らない。
村人から教わったこと。
亡き職人から託された技術。
親友からもらった言葉。
王都で出会った人々の知恵と優しさ。
受け取ったものを決して捨てず、自分なりの形へ変え、また誰かへ渡していく。
その積み重ねが、いつしか一つの街を、国を――そして世界さえも動かしていく。
これは英雄になろうとしなかった一人の少年と、
その隣を歩き続けた一人の少年が、
多くの人々からから受け取ったものを、
ずっと先の誰かへと運んでいく物語。
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