日ノ本を掌中に収め、天下人として君臨する豊臣秀吉。
聚楽第で栄華を極める彼のもとに、奥州の片隅から「九戸政実」という一人の男が叛旗を翻したという報告が届く。
たかが一領主の騒乱と高を括っていた秀吉だったが、政実が繰り出す戦術は、従来の戦の常識を覆す異様なものだった。
雪を操り、精鋭を恐怖で支配し、豊臣軍の軍勢を雪山の藻屑に変えていく政実の「冬の戦」。
その報告を聞くたび、秀吉の中で何かが軋み始める。天下統一という夢を果たしたはずの彼の中に芽生えたのは、得体の知れない不安と、政実という男に対する激しい執着だった。
かつての覇王としての威厳を失い、怒りに支配された「猿」のような姿を露わにしていく秀吉。そして、その異変にいち早く気づいた石田三成ら側近たちが、主君を救おうと苦悩し、やがて天下人の足元から豊臣家の結束が音を立てて崩れていく。
これは、最強の武将と、最強の戦略家。二人の男が北の雪原で相見えることで、平穏だったはずの天下が、静かに、そして確実に終わりへと向かっていく物語である。
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