剣と名誉がものを言う時代を舞台にした物語である。ここで剣は、英雄の飾りではない。暮らしを支える仕事道具であり、ときに人を壊すために買われてしまう危うい力でもある。
若い剣士パウルスは、名の知られた老剣士である父ヨハネスの背を追いながら、道場を守って生きている。だが弟子は少なく、金は足りない。腕が立つだけでは食べていけない――その現実が、毎日の稽古と同じ重さで彼にのしかかる。
剣の評判が立てば、真っ当な稽古の縁も増える一方で、「剣の力を都合よく使いたい」人間も寄ってくる。剣士は、戦う以前に選択を迫られる。
そこへ、男装の女剣士が現れたり、事情を抱えて身分を隠している者が稽古場に入り込んだりする。道場の内側で起きる小さな変化は、やがて街の論理、旅の現実、権力の作法や噂話へとつながっていく。旅には金が要り、鎧を整えるには信用が要る。勝負に勝つことが大切でも、勝ち負けだけで片づかない場面が確かにある。
さらに争いが大きくなると、剣は「戦い」の道具であるだけでなく、「裁き」の空気に近づいていく。言葉より力が幅を利かせそうな瞬間、正しさが見えにくくなる瞬間がある。
剣で稼ぐとは何なのか。剣で守れるものは何なのか。剣で失うものは何なのか。生活と名誉のあいだで揺れる剣士たちが、何を守り何を捨てるのかを問う剣士小説。
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